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Worldwide differences in outcomes among atherothrombotic patients: the REduction of Atherothrombosis for Continued Health (REACH) Registry Results
E. Magnus Ohman氏,on behalf of the REACH Registry Investigators
アジアにおける動脈硬化性イベント発生率の欧米との比較:REACHレジストリ
■アジアでのイベント発生率は15%を超えている
REACHレジストリは,全世界44カ国の5,592施設より登録された68,000例を超える外来患者の実態調査であり,これらの患者の動脈硬化性疾患の有無は問われない。
まず保有する危険因子の分布を見ると,北米における高血圧(86.4%),高コレステロール血症(83.7%),肥満 [BMI≧30kg/m2](42.3%)の割合が世界で最も高く,中東では糖尿病(52.4%)が多かった。日本では喫煙(16.5%)の割合が世界で最も高く,腹部肥満(57.8%)の割合はオーストラリアが最も高かった。
危険因子に対する治療として、降圧療法が約50%、スタチンなどの脂質低下療法が約75%実施されていたが,「血圧≧140/90mmHg」の割合が40〜65%を占め,中でも北米の40%が最も低く,日本は44%であった。また「総コレステロール値≧200mg/dL」はオーストラリアで最も低く(24%),これに北米の28%が続き,日本では43%と半数近くが200mg/dL以上という結果であった。
各地域の2年間における累積動脈硬化性イベント発生率(年齢・性別にて補正)の比較では,「心血管死」は全世界でおおむね5%未満であったが,アジア地域で最も低かった。また「心血管死+心筋梗塞+脳卒中」で比較すると,東ヨーロッパと中東が約10%と他地域に比べ高く,アジア地域は5%弱で最低であった。しかしこれらに「一過性脳虚血発作,不安定狭心症,末梢血管疾患増悪など入院を要するその他の動脈硬化性イベント」を加えると,アジア地域での発生率は15%強でオーストラリアと同等となり,20%の西ヨーロッパや約18%の北米と大きく異ならなかった。
これらの結果を踏まえてOhman氏は,「動脈硬化性イベント予防の為の治療は行われているが,十分とは言えない」と注意を喚起したが,これはアジアにも当てはまる警告である。
※日本においては2年間の追跡がまだ終了していないため、累積動脈硬化性イベント発生率の日本のデータは報告されておりません。
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The Stroke Prevention by Aggressive Reduction in Cholesterol Levels (SPARCL) Study
Pierre Amarenco氏,Denis Diderot University(フランス)
脳卒中既往患者に対する積極的コレステロール低下療法の有用性:SPARCL後解析
■LDL-C低下率≧50%群で脳出血の増加は認められず
SPARCLの対象は,6カ月以内に脳卒中あるいは一過性脳虚血発作(TIA)を発生し,冠動脈疾患の既往を認めない患者4,731例で,LDL-C値は平均133mg/dL (100〜190mg/dL)であった。これらの患者をアトルバスタチン80mg/日群とプラセボ群に無作為に割付け,二重盲検下に追跡する予定であったが,プラセボ群の25.4%で追跡期間中にスタチンが投与されていた。
そこでAmarenco氏らはこのようなプロトコル違反の影響を排除すべく,追跡期間中にLDL-C値が「不変・増加」だった群(32.7%),「低下率<50%」群(39.4%),「低下率≧50%」群(27.9%)の3群間でイベント発生リスクを比較した。
その結果,「不変・増加」群に比べ,「低下率≧50%」群では全脳卒中が31%と有意に減少した(95%信頼区間:0.55-0.87)。脳梗塞も33%と有意に減少したが,脳出血の増加は認められなかった。主要な冠動脈イベント,冠動脈イベント,主要な心血管イベントも同様で,いずれも「不変・増加」群に比べ「低下率≧50%」群では有意に減少していた。
LDL-C「低下率≧50%」という値が得られた症例の96%はアトルバスタチン群におけるものであったため,Amarenco氏は「アトルバスタチンの服用コンプライアンスが良好な患者では,脳出血リスクを増加させることなく脳梗塞リスクが著明に減少した」と結論し,脳卒中やTIA患者では発生直後から積極的コレステロール低下療法を開始すべきであると述べた。
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Metabolic syndrome and type 2 diabetes, a very common clinical profile in cardiology Jorge Plutzky氏, Brigham and Women's Hospital(米国)
メタボリックシンドロームは極めて高リスクであり患者数は増加
■60歳代では米国人男女の45%近くがメタボリックシンドロームを呈している
メタボリックシンドロームは心血管死[Lakkaら]のみならず,冠動脈イベントや脳卒中リスクを増加させるが[ARIC Study],それは耐糖能異常や糖尿病の有無に関わらないことが示されている[BOTNIA Study]。一方,耐糖能異常にメタボリックシンドロームが合併することにより,冠動脈疾患の合併率は2〜4倍に上昇すること[Isomaaら],および急性心筋梗塞後患者の約半数が耐糖能異常を呈していることが示されている[Norhammarら]。
このようにメタボリックシンドロームと糖尿病は,重要な脳・心血管疾患リスクであるが,メタボリックシンドロームは糖尿病リスクとしても重要であり,その発生頻度は予想以上に高い。
急性心筋梗塞後の633例を検討したZellerらの成績では,46%の患者がメタボリックシンドロームと診断され[RICO AMI France],現在の米国男性の25〜30%弱,女性の20〜30%超が,NCEP-ATP III基準のメタボリックシンドロームに相当するとされている。
このようなメタボリックシンドローム増加の背景には,肥満の増加がある。とりわけ米国において,小児・青年の肥満が増加していることは懸念材料である。加えて,高齢になるに従いメタボリックシンドロームが増加し,60歳代では米国人男女の45%近くがメタボリックシンドロームを呈している。
「このようにメタボリックシンドロームは極めて高頻度に見られる上に高リスクであり,看過できない状態である」とPlutzky氏は改めて警告した。
P4013
Platelet-activating factor acetyl hydrolase predicts cardiovascular and total mortality independently of angiographic coronary artery disease status, C-reactive protein, N-terminal pro- B-type natriuretic peptide, and other established risk factors (the Ludwigshafen Risk and Cardiovascular Health Study)
K. Winkler氏, University of Freiburg(ドイツ)
PAF-AH活性は心血管死・総死亡の独立した予知因子である
■PAF-AH活性の最高値群では最低値群に比べ心血管死リスクが有意に上昇 本研究の解析対象は,プロスペクティブコホート研究であるLudwigshafen Risk and Cardiovascular Health Study(LURIC)に登録されていた3,248例で,全例を冠動脈造影(CAG)施行後,5.54年間(中央値)追跡した。今回の解析では,試験開始時のPAF-AH活性と転帰の関係を検討した。
その結果,PAF-AH活性を4分位数で分けた場合、活性の最高値群では最低値群に比べ,総死亡のハザード比が有意に高くなっていた(1.59,p<0.001)。年齢,性別,BMI,喫煙,2型糖尿病,高血圧,脂質低下薬・アスピリン服用,LDLコレステロール,HDLコレステロール,トリグリセリド,CRPによる補正後も同様に,総死亡リスクは1.76とPAF-AH活性が最高値群で有意に高値であった(p=0.001)。PAF-AH高値はNT-pro-BNPで補正しても,総死亡の予知因子であった(ハザード比:1.561,P=0.005)。そこで,これら全因子で補正した後,心血管死のハザード比を比較したが,PAF-AH最高群では最低群に比べ,やはり有意な増加が認められた(ハザード比:1.563,p=0.023)。
このようにPAF-AH活性がCRPとは独立した生命予後規定因子であったことから,両者の関係を検討したところ,CRPが高値になるほどPAF-AH活性亢進による死亡ハザード比は高値となっていた。
さらに,CAGによる冠動脈病変重症度を加えて補正しても,PAF-AH最高値群では最低値群に比べ総死亡のハザード比が1.73と有意に高かったが(p=0.001),冠動脈病変の有無に分けて検討すると,冠動脈疾患を認めない患者では,冠動脈疾患患者と異なり,PAF-AH活性と生存率には有意な相関が認められなかった。
これらの結果を踏まえてWinkler氏らは「冠動脈疾患患者においてPAF-AH活性は,CRP,NT-pro-BNPなど,これまでに明らかになっている危険因子とは独立した総死亡・心血管死の予知因子である」と結論し,介入の対象となり得る可能性も指摘した。
P4121
The dyslipidemia of the metabolic syndrome is associated with larger and unstable coronary plaques
P. Johansson氏,Sahlgrenska University Hospital(スウェーデン)
メタボリックシンドロームや糖尿病患者の冠動脈プラークはサイズが大きく不安定である可能性
■脂質代謝異常の是正をまず行うべきである
Johansson氏らが対象としたのは,経皮的冠血行再建術(PCI)施行予定の安定狭心症29例で,アトルバスタチン80mg/日群とプラセボ群への無作為化10週間後に,血管内エコー法(IVUS)および,PCIにともなうアテローム切除術を施行し,プラークの性状を調べた。
その結果,プラーク病変の長さは,アポAI,HDLコレステロール(HDL-C),LDLサイズと有意に逆相関し,トリグリセリドと正の相関が認められた。プラーク容積はアポAIと有意な逆相関を認め、他の因子では有意な相関はみられなかった。プラーク内マクロファージとアポAI・HDL-Cとの間には有意な逆相関が認められ,またアポAIには,プラーク内コラーゲン量とは有意な正の相関,MMP-9とは有意な逆相関が認められた。
すなわち,メタボリックシンドロームに特徴的な脂質代謝異常である「HDL-Cの低下,あるいはsmall dense LDLの増加」はプラーク病変の長さと容積を増大させ,またプラーク内コラーゲンの減少と被膜性線維の分解を促進し,さらにプラーク内マクロファージの増加によるプラークの不安定化をもたらすと考えられた。
これらの結果より,「メタボリックシンドロームあるいは糖尿病に典型的な脂質代謝異常によってもたらされるプラークは,より破綻しやすいと考えられる。したがってメタボリックシンドロームや糖尿病患者では,これらの脂質代謝異常の是正がまず行われるべきである」とJohansson氏らは結論した。
4823
Cardiovascular disease prevalence and relationship with waist circumference (WC) in Asian versus European primary care patients: the International Day for the Evaluation of Abdominal Obesity (IDEA) study
J. P. Bassand氏,University of Besançon-Franche-Comté(フランス)
東洋人においても腹部周囲径増加に伴い心血管リスクが増加:IDEA研究
■東アジア・南アジアでは腹部周囲径の独自の基準値が必要
IDEA研究では,2005年5月9日〜7月6日の間に全世界63カ国のプライマリケア医を受診した177,345例を対象に,腹部周囲径と心血管疾患の有無などが検討された。
その結果,男女を問わず腹部周囲径増加に伴い,心血管疾患の有症率が増加する傾向が認められた。
アジアを「南アジア(インド周辺)」,「東南アジア」,「東アジア(中国,台湾,韓国)」に分け,西ヨーロッパと比較すると,東アジアと東南アジアの腹部周囲径は西ヨーロッパに比べ低い例が著明に多かったが,南アジアでは他のアジアに比べ腹部周囲径の高い例が,男女ともに多かった。同様に「腹部肥満」とされる例の割合も,南アジアでは米国NCEP-ATP III基準,IDF基準のいずれを用いても他のアジア地区に比べ高く,西ヨーロッパとほぼ同等という高値であった。また,心血管疾患有症率は上記4地域間に大きな差はなく,男女ともおおむね10〜15%の間であった。
次に,心血管疾患有症のオッズ比(年齢補正後)に腹部周囲径,BMIが及ぼす影響を検討した。腹部周囲径(BMIで補正)とBMI(腹部周囲径で補正)の「1標準偏差」増加とオッズ比の関係を見たところ,男性では東南アジア以外,女性では全地域で腹部周囲径増加がBMI増加よりも心血管疾患有症率が高かった。
また男性では西ヨーロッパ以外,女性では全地域で腹部周囲径増加はBMI増加よりも糖尿病有症率を著明に増加させていた。
Bassand氏は「アジアにおいても腹部周囲径は,BMIより心血管疾患と糖尿病有症率との相関が強い」と結論するとともに,東アジアと南アジアでは世界の他地域に比べ腹部周囲径が低かったため,「独自の基準値を設定する必要がある」と述べた。
P5390
Rosuvastatin plus ezetimibe for achievement of low-density lipoprotein cholesterol and C-reactive protein goals: results from the EXPLORER study
C. M. Ballantyne氏,Baylor College of Medicine(米国)
ロスバスタチン+コレステロール吸収阻害剤併用でLDL-CおよびCRPを強力に低下
■エゼチミブ併用により高リスク患者のLDL-C目標到達率を有意に改善
EXPLORER試験は6週間のオープンラベル試験であり,LDLコレステロール(LDL-C)値160〜250mg/dLかつトリグリセリド(TG)<450mg/dLの冠動脈イベント高リスク(冠動脈疾患の既往,あるいは同等のリスク)患者469例が,ロスバスタチン40mg/日単独群(230例)またはエゼチミブ10mg/日+ロスバスタチン40mg/日併用群(239例)に無作為化された。平均年齢は63歳,BMIは平均29kg/m2であった。試験開始時のLDL-C値はエゼチミブ併用群が189.2mg/dL,ロスバスタチン単独群が190.8mg/dLであった。
6週間の試験期間終了後,LDL-C値はエゼチミブ併用群で56.9mg/dL,ロスバスタチン単独群で81.5mg/dLまで低下した。「LDL-C値<70mg/dL未満」の達成率を比較すると,ロスバスタチン単独群35.0%に対し,エゼチミブ併用群では79.6%と有意に高値であった(p<0.001)。同様に,「LDL-C値<100mg/dL」達成率で比較しても,エゼチミブ併用群では94.0%と,ロスバスタチン単独群の79.1%に比べ有意に高値であった(p<0.001)。
さらに「高感度CRP<2mg/L未満」かつ「LDL-C値<70mg/dL」達成率もエゼチミブ併用群で高く,ロスバスタチン単独群の18.6%に対し55.0%であった(p<0.001)。
エゼチミブ併用による有害事象の増加は認められず,筋障害や横紋筋融解はいずれの群においても認められなかった。
これらの結果からBallantyne氏らは,「LDL-CとCRPの両方を強力に低下させるエゼチミブ併用は,心筋梗塞再発の抑制および心血管死の減少につながるだろう」と考察した。
P5393
Achievement of LDL-cholesterol goals by addition of ezetimibe to high dose statin therapy in Heterozygous Familial Hypercholesterolemia patients: 12 months follow up
L. Papadimitriou氏,Ippokration hospital(ギリシャ)
ヘテロ接合型FHへのコレステロール吸収阻害剤追加によりLDL-C値は121mg/dLに低下
■エゼチミブの追加によりLDL-Cはさらに22.5%減少
本検討の対象となったのは,平均年齢54.8歳のヘテロ接合型FH患者105例で,既に高用量スタチンを1年間以上服用していた。これら全例にエゼチミブ10mg/日を1年間投与し,血清脂質の変化を追跡した。
その結果,スタチン単独服用時には5.7%であったLDL-C目標値(International Panel on the Management of FH)達成率が,エゼチミブ追加3カ月後には34.9%へと有意に増加した(p<0.001)。エゼチミブによるLDL-C低下作用は減弱せず,追加開始1年後も目標値達成率は40.5%へ増加傾向を示した。
個々の血清脂質の変化を見ると,スタチン単独による総コレステロール(TC)低下率は30.6%,LDL-Cは37.5%(278mg/dL→159mg/dL),トリグリセリド(TG)は13.6%で,いずれも服用前に比べ有意に減少していた。その後,エゼチミブ追加1年後にはさらにTCは16.9%,LDL-Cは22.5%,TGは9.2%いずれも有意に減少し(p<0.001),LDL-Cは121mg/dLまで低下した。安全性に関しては,エゼチミブ追加後,肝機能障害・筋障害指標の悪化は認められなかった。
以上の成績を踏まえ,「ヘテロ接合型FHに対し,高用量スタチン+エゼチミブ併用は有用と考えられる」とPapadimitriou氏らは結論した。
Satellite Symposium
Setting a new standard in cholesterol management
コレステロール管理の新基準を築く:サテライトシンポジウム
■プラークの退縮には50%以上のLDL-C低下率が必要
Lawrence Leiter氏,University of Toronto(カナダ)
臨床イベントをエンドポイントとした臨床試験の結果から,LDLコレステロール(LDL-C)が低いほど冠動脈イベント発生率が低いことが明らかになっている。さらに血管内エコー法を用いて行われたREVERSALやASTEROIDと言った臨床試験の結果,プラークを退縮させるにはLDL-Cの50%以上の減少が必要だと考えられるようになってきた。
またLDL-Cを100mg/dLよりはるか低値まで低下させたPROVE-IT,A-to-Z,TNTおよびIDEALの4試験をあわせて解析すると,100mg/dLを目標とするよりもより積極的なLDL-C低下を試みた方が主要冠動脈イベントは有意に減少している(オッズ比:0.84,95%信頼区間:0.77-0.91)。
問題はそのような積極的LDL-C低下目標値の達成率である。例えばLeiter氏らが行っているGOALL(Guidelines Oriented Approach to Lipid Lowering)レジストリでは,LDL-C値2.5mmol/L(96.8mg/dL)未満の達成率ですら43.5%に過ぎなかった。「臨床家は,LDL-C目標値到達のためには,適切な薬剤を適切な用量で使用する必要がある」と同氏は述べた。
■スタチン単独では達成しがたいLDL-C目標値
Alberto Corsini氏,University of Milan(イタリア)
スタチンによるLDL-C目標値到達率が不十分である原因として,「服薬コンプライアンスの経時的低下」,ならびに「不十分なスタチンの増量」が挙げられる。不十分な増量の背景には,高用量スタチンに対する有害事象の懸念がある。実際に,フランスで高用量スタチンを服用している7,924例を対象に行った横断研究PRIMO(Prediction of Muscular Risk in Observational conditions)によると,10.5%の患者が何らかの筋症状を呈していた。
そこで期待されたのが,通常用量スタチンへのエゼチミブ追加併用である。米国においてNCEP-ATP IIIのLDL-C目標値をスタチン単独で達成できない患者を対象としたEASE試験が実施され,エゼチミブは有害事象を増加させることなくLDL-C目標値達成率を著明に改善しうることが明らかにされた。
さらに最近,アポE蛋白多型のE4を持つ患者では,小腸からのコレステロール吸収が亢進しているためスタチンへの反応が不良であるとの知見も報告されており,このような患者もエゼチミブの良い適応になるという。
「高リスク患者においては,目標LDL-C値の達成は焦眉の急である」とCorsini氏は,あらためて注意を促した。
■コレステロールの合成と吸収を制御する“Dual Inhibition”はなぜ必要か
Antero Kesäniemi氏,University of Oulu(フィンランド)
血中コレステロール濃度の規定因子は,肝臓における「合成」と小腸からの「吸収」であるが,LDL-C高値患者では吸収が亢進していることを,Kesäniemi氏らは既に1987年に報告している。
小腸からのコレステロール吸収を担うのはNPC1L1(Niemann-Pick C1 Like1)というトランスポーターであり,エゼチミブはこのNPC1L1の阻害薬である。エゼチミブはコレステロール吸収を54%抑制し,総コレステロールやLDL-Cをプラセボに比べ有意かつ著明に低下させる。特にスタチンによるコレステロールの合成抑制は,代償的に小腸からの吸収を亢進させるため,吸収を抑制できるエゼチミブとスタチンとの併用は,強力なLDL-C低下作用が期待される。実際これまでの臨床試験において,アトルバスタチン10mg/日+エゼチミブ10mg/日によるLDL-C低下率は,アトルバスタチン80mg/日単独と同等であることを示す成績が得られている。
「エゼチミブとスタチンの併用は,コレステロールの合成・吸収の双方を抑制する(Dual Inhibition)合理的な併用である」とKesäniemi氏は結論した。
■エゼチミブ併用により脂質代謝異常改善作用は著明に増強される
Michel Farnier氏,Point Medical(フランス)
スタチン+エゼチミブ併用による脂質代謝異常の改善効果を示す成績として,まず「シンバスタチン+エゼチミブ併用」と「アトルバスタチン単独」のLDL-C低下作用を比較したVYVA研究が示された。VYVA研究では,高コレステロール血症1,902例をアトルバスタチン10〜80mg/日,あるいは同用量のシンバスタチン+エゼチミブに無作為化し,6週間後のLDL-C変化率を比較した試験である。その結果,シンバスタチン+エゼチミブ群は同用量のアトルバスタチン群のいずれよりも,LDL-C値が有意に低下した。また「LDL-C<70mg/dL達成率」も全用量において,シンバスタチン+エゼチミブ群で有意に高値となった。
同様の比較をロスバスタチンと行っても結果は同じで,ロスバスタチン10〜40mg/日単独群に比べ,同用量のシンバスタチン+エゼチミブによるLDL-C低下作用は有意に強力であった。また「LDL-C<100gm/dL」達成率を比較したところ,エゼチミブ併用群では90.1%でロスバスタチン単独群の82%を有意に上回った。「LDL-C<70mg/dL」達成率も,ロスバスタチン単独が29.4%であったのに対し,エゼチミブ併用群では50.1%であった(p<0.001)。またトリグリセリド(TG),アポB蛋白,non-HDL-Cの減少率もロスバスタチン単独に比べ,エゼチミブ併用群が有意に大きかった。
このような強力な脂質代謝異常改善作用にもかかわらず,有害事象の発現率はロスバスタチン単独群とシンバスタチン+エゼチミブ併用群で同等の結果であった。
これらを踏まえ,「スタチン+エゼチミブは,原発性高コレステロール血症患者に対し,有効かつ安全な併用である」とFarnier氏は述べた。
■エゼチミブによる臨床的エビデンス
Jordi Soler氏,Vall d'Hebron University Hospital(スペイン)
エゼチミブによる脂質代謝異常改善作用が,臨床イベントにどのような影響を与えるか,誰もが興味のあるところであり,現在,エゼチミブを用いた大規模臨床試験として,ENHANCE,SEAS,IMPROVE-IT,SHARPの4つが進行中である。
ENAHNCEはシンバスタチン単独とシンバスタチン+エゼチミブ併用が頸動脈肥厚に及ぼす影響を725例で検討した試験で,来年の米国心臓病学会(ACC)にて報告予定だという。
SEASでは,大動脈狭窄症例に対するスタチン+エゼチミブ併用の心血管イベント抑制効果がプラセボと比較される。登録は完了しており2008年の結果報告が予定されているという。
IMPROVE-ITではPROVE-ITと同様,急性冠症候群を対象に,シンバスタチン40mg/日+エゼチミブ10mg/日とシンバスタチン40mg/日を比較する。エゼチミブ併用群ではLDL-Cが50mg/dL近くまで低下されると想定されており,現在の「70mg/dL未満」よりさらに積極的なLDL-C低下療法の有用性が検討される。
SHARPは保存期〜末期腎不全患者を対象に,スタチン+エゼチミブ10mg/日併用による主要血管イベントの抑制効果をプラセボと比較する試験である。IMPROVE-IT同様,SHARPもまだ現在登録中であるという。
「上記試験を併せると21,000例でエゼチミブ併用が検討されることになり,これらの結果により有用性が確立するのを期待したい」とSoler氏は講演を結んだ。
WCC2006 Press Release
Statin monotherapy may be insufficient for treating high risk patients according to European physician survey
Alberico Catapano氏,University of Milan(イタリア)
ハイリスク患者の高コレステロール血症治療においてスタチン単独療法では不十分な可能性:欧州医師に対する意識調査結果
■エゼチミブとスタチンの併用はハイリスク患者の有用な治療選択肢として期待
コレステロール管理に対する治療指針を調査するため,ヨーロッパ全域の一般開業医および心臓専門医175人を対象として,専門調査機関TNSによるアンケート調査が実施された。その結果,調査に参加した77%の医師が「高コレステロール血症治療に関するガイドラインが十分に守られていない」と感じていることが明らかになった。
その理由として多くの医師が「スタチン療法の限界」を挙げており,高用量スタチンの処方は副作用が懸念されるため躊躇することに同意した医師は64%に達した。また,スタチンは倍量にしてもLDL-C低下率が6%程度しか得られないという「スタチンの6%の法則」を約半数の医師が認識し,スタチンの漸増療法が効率的でないとの意見も認められた。
特に冠動脈疾患の既往や糖尿病などの危険因子を有するハイリスク患者へのスタチン単独療法は,72%もの医師が治療効果は不十分であると感じ,また86%もの医師がコレステロールの合成制御だけでなく,小腸における吸収制御にも取り組む必要性を認識していた。
Catapano氏はこれらの結果を踏まえ,「スタチン療法は有効な治療法だが,効果不十分の場合や高用量スタチンを躊躇する場合には別の治療法を考慮する必要がある。一方で,コレステロールの吸収を阻害するエゼチミブとスタチンの併用療法は,より効率的なLDL-C低下効果が得られるため,新たな治療法として期待される」と述べた。
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