European Society of Cardiology Congress 2005 WILL Medical Congress Report


脂質管理におけるコレステロール吸収阻害の意義
FH 患者において,高用量スタチン+コレステロール吸収阻害剤併用は非常に有効
同一コストで得られる生存期間はコレステロール吸収阻害剤の併用療法の方が長い
スタチンによる生命予後改善効果の発現までには約2 年の期間を要する:メタ解析結果から
ACS 後の積極的LDL‐ C 低下治療が奏効しない患者像が明らかに:PROVE IT サブ解析
ACS 後のアポB が高値を示す例では積極的LDL‐ C 低下療法の影響が大きい
ホモシステイン,アポB/AI 比とメタボリックシンドロームは動脈硬化性疾患の独立した危険因子:COMAC 研究
動脈硬化性疾患発症に対するメタボリックシンドロームのリスクは高LDL‐ C 血症と同等
メタボリックシンドロームと軽度腎機能障害の間に相関
Press Conference Highlight 〜より良いコレステロール低下療法を目指して
この情報には一部、本邦未承認の情報が含まれております。


Satellite Symposium
The Essential Role of Cholesterol Absorption in Lipid Management

脂質管理におけるコレステロール吸収阻害の意義

■イベント抑制には積極的な脂質低下が有効
Harvard University, U.S.A. Christopher Cannon氏
 スタチンを用いたLDLコレステロール(LDL-C)低下療法による動脈硬化性疾患の1次・2次予防効果は,多くの大規模試験で認められている。
 中でも注目すべきはHPSであり,治療による到達LDL-C値が低いほど,脳・心血管イベントが減少する傾向が示された。同様の知見はPROVE ITでも得られたが,重要なのはLDL-C値は"The lower, the better"であるのは間違いないという点である。特にPROVE ITでは積極的なLDL-C低下群において治療後30日には冠動脈イベントの有意な減少が認められ(ハザード比: 0.72,95%信頼区間0.52〜0.99),この効果は試験終了時まで持続した。
 また,炎症性のマーカーであるC反応性タンパク(CRP)の低下も予後改善に重要である。「LDL-Cが70mg/dL未満に低下してもCRPが2mg/L以上」であれば,心筋梗塞の再発や冠動脈死のリスクは「LDL-C が70mg/dL以上でCRP 2mg/L未満」と同等であることが明らかになっている。エゼチミブを用いた臨床試験においては,エゼチミブとシンバスタチンの併用が,シンバスタチンと同用量のアトルバスタチンを単独で投与した場合に比べてはるかに強力なLDL-C,CRP低下をもたらすことから,これらの併用はイベント抑制の観点からも非常に期待できるという。

■現実のLDL-C値目標到達率は低い
Imperial College, U.K. David Wood氏
 強力なLDL-C低下療法の有用性が明らかになりつつある一方で,欧州15カ国47施設で実施されたEUROASPIRE IIのデータによれば,冠動脈疾患患者の61%が脂質低下薬を服用していたにもかかわらず,総コレステロール値が5mmol/L(194mg/dL)未満まで低下していたのは全体の42%に過ぎなかった。
 このような事態が生ずる原因を明らかにしたのが,欧州10カ国,58,223例における実態調査,REALITYである。スタチンで治療を開始した患者のLDL-Cが目標値に達しない場合,より強力な脂質低下治療(薬)に切り替えると答えた臨床医は16%に留まっていた。

■エゼチミブとスタチンの併用によるLDL-C目標到達率は70%以上
University of Bonn, Germany Klaus von Bergmann氏
 Bergmann氏は,血中のコレステロールが肝臓における「合成」と小腸からの「吸収」という2つの経路に由来しており,高LDL-C血症患者では「吸収」が亢進している事実を示した。したがって高LDL-C血症においてはスタチンによる「合成」阻害のみならず,「吸収」阻害も有用と考えられる。小腸からの吸収を阻害する薬剤として欧米ではエゼチミブが用いられている。エゼチミブは小腸細胞のNPC1L1蛋白に作用しコレステロール吸収を選択的に阻害するという,これまでに類を見ない薬剤である。Bergmann氏らの行った臨床研究では,エゼチミブにより腸管からのコレステロール吸収が54%も有意に阻害されていた。
 スタチンとは作用機序が異なるため,併用によるLDL-C低下作用の増強が期待される。これまでに行われた臨床試験成績をまとめると,スタチン単独投与時に比較してエゼチミブを併用した場合にはさらに18〜24%のLDL-C低下が示され,どのスタチンとの併用においても一定した効果が認められている。
 「スタチン服用によりLDL-C目標値を達成できない場合,エゼチミブを併用すれば70%以上の患者で目標値を達成できる」とBergmann氏は述べた。

■エゼチミブとスタチンの併用効果・安全性の面で有用
The
Metabolic Syndrome Institute, France Michel Farnier氏
 スタチンで効果不十分な場合に,スタチンを増量するのではなく,エゼチミブの併用を推奨する理由の1つに「スタチン6%の法則」がある。つまりスタチンを倍量に増量しても,得られる追加効果はわずか6%であり,高用量になるほど増量によるLDL-C低下作用は期待できない。逆に有害事象は用量依存性に増加するためリスク・ベネフィットの観点から好ましくないという。
 また,Bergmann氏が説明した通り,血中コレステロール濃度は2つの経路で決定されるため,1つの経路を阻害するだけではもう一方の経路により代償されてしまう可能性もある。このような観点からもスタチンによる合成阻害と,エゼチミブによる吸収阻害を組み合わせるのが望ましい。
 さらに,エゼチミブはLDL-C低下作用がスタチンよりも早期に発現するため,スタチンの緩徐なLDL-C低下作用を補いうるという特徴もある。なお,エゼチミブのLDL-C低下作用は長期にわたり,その後も持続する。またエゼチミブとスタチン併用時の副作用発現率は,スタチン単独投与時と変わらず安全に使用できる。
 Farnier氏はコレステロールの「合成」と「吸収」を同時に阻害するメリットをこのように解説した。

■エゼチミブによる予後への影響を検討した各種大規模試験が進行中
 University of Oslo, Norway Terje Pedersen氏
 Pedersen氏からは,エゼチミブの予後への影響を検討した現在進行中の大規模臨床試験の内容が紹介された。家族性高コレステロール血症患者を対象に頸動脈肥厚に及ぼす影響をエゼチミブ+シンバスタチンの併用とアトルバスタチン単独で比較するENHANCE,慢性腎不全患者においてエゼチミブ+シンバスタチン併用による脳・心血管イベントへの影響を検討するSHARP,大動脈狭窄症患者におけるエゼチミブ+シンバスタチン併用の有用性をプラセボと比較するSEAS,さらにACS患者においてエゼチミブ+シンバスタチン併用とシンバスタチン単独を比較するIMPROVE ITなどが進行中である。これらに含まれる患者数は20,000例を超える予定で,「結果が得られた際には,エゼチミブの確たるエビデンスが示される」と同氏は述べた。
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2278
Significant Reduction of LDL-Cholesterol by Addition of Ezetimibe (Ezetrol) to High Dose Statin Therapy in Heterozygous Familial Hypercholesterolemia Patients
Hippokration Hospital, Greece Constantina Masoura氏

FH患者において,高用量スタチン+コレステロール吸収阻害剤併用は非常に有効

■高リスクFH患者においてエゼチミブの併用は特に有用
 Masoura氏らは1年以上スタチンを服用しているhFH患者87例に,最低6カ月間エゼチミブを併用し,脂質代謝への影響を検討した。
 未治療時336mg/dLであったLDL-Cの平均値は,高用量スタチン服用により193mmHgまで低下したが,エゼチミブ併用でさらに142mg/dLまで, 24.1%有意(p<0.001)に低下した。エゼチミブ併用によりスタチン単独時に比べトリグリセリドは10.2%,non HDL-Cは23.6%有意に減少した。
 また,患者を冠動脈疾患(以下CAD)合併の有無で分け,LDL-C目標値(CAD合併例<100mg/dL,CAD非合併例<130mg/dL)達成率を比較した。スタチン服用時の目標達成率は,CAD非合併例で16.9%,合併例では3.8%といずれも低かった。エゼチミブ併用時ではCAD非合併例で57.7%,合併例で33.3%あり,CAD合併例における目標達成率が極めて改善された。
 以上の結果を踏まえてMasoura氏らは「エゼチミブによって新しい治療アプローチが可能となり,エゼチミブは高リスク患者に対するスタチンの補完的な薬物治療としても非常に有用である」と結論している。
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2298
Projected Benefits and Cost Effectiveness of Switching to Dual Inhibitation Therapy (Ezetimibe/Simvastatin) in Germany for Patients not at Goal on Statin Monotherapy
MSD Sharp & Dohme GmbH, Germany Karl J. Krobot

同一コストで得られる生存期間はコレステロール吸収阻害剤の併用療法の方が長い

■スタチン+エゼチミブ併用療法の費用対効果を生命予後の観点から検討
 Krobot氏らは,ドイツ国内より無作為で選出した62施設からアトルバスタチンまたはシンバスタチンの単独療法でLDL-Cの目標値を達成できなかった250例を無作為に抽出した。
 これらの患者の背景因子をもとに,フラミンガムスコアを用いて年間冠動脈イベント(致死性・非致死性)の発症率を,またドイツの死亡統計データに基づき冠動脈疾患死を除く年間死亡率を算出した。
 さらに,これらの患者がシンバスタチン+エゼチミブを服用した場合のLDL-Cの低下率を従来の臨床試験成績より算出し,同様にイベント発生率を推計した。
 次に,アトルバスタチン,シンバスタチンとエゼチミブ合剤(シンバスタチン+エゼチミブ)を患者が購入する価格を調べた。
 これらのデータをもとに,スタチン単独治療と同じ効果が得られるエゼチミブ合剤に切り替えた場合,1日当りの平均コストと得られる生存期間から費用対効果が比較検討された。
 その結果,アトルバスタチン単独投与で増量しない場合,同じコストで得られる生存期間は,エゼチミブ合剤に切り替えた場合の81%まで低下した。アトルバスタチンを増量すると効率はさらに低下し,同じコストで得られる生存期間はエゼチミブ合剤の54%にまで低下した。
 アトルバスタチン,シンバスタチンを,ジェネリックのシンバスタチンに変更し,変更前と同等までLDL-Cを低下した場合でも同じように,エゼチミブ合剤への切り替えに比べると同一コストで得られる生存期間は短縮するという推定結果となった。
 あくまでもMarkovモデルという統計的推定の結果であるとしつつ,Krobot氏らは「アトルバスタチンやシンバスタチンでLDL-C目標値が達成されない場合,エゼチミブ合剤に変更したほうが費用対効果に優れる」と結論している。
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860
HMG CoA Reductase Inhibitors (Statins) Fail to Significantly Improve Survival During Their First Year of Use: a Meta-analysis of 61,000 Subjects from Seven Randomised Placebo-controlled Clinical Trial
University of Texas U.S.A.  Mohammad Madjid氏

スタチンによる生命予後改善効果の発現までには約2年の期間を要する:メタ解析結果から

■タイムラグを埋める治療としてスタチンの増量あるいは他剤併用の有用性を示唆
 同氏らが解析対象とした大規模試験は,スタチンを用いて2年間以上追跡した,プラセボ対照無作為化試験である。1次予防,2次予防は問わなかった。
 その結果,4S,LIPID,CARE,WOSCOPS,AFCAPS/TexCAPS,ASCOT-LLA,HPSの7試験に参加した61,658例のデータがメタ解析された。「スタチン群の死亡率−プラセボ群の死亡率」を各試験で経時的にプロットし,それらを統合した曲線(スタチン生存率改善曲線)と,その95%信頼区間を求めた。
 その結果,スタチン生存率改善曲線の95%信頼区間下限が0を超えたのは2.35年後だった。これは,スタチン群の生存率がプラセボ群に比べ有意な改善を示すまでに,およそ2.35年かかっていたことを示している。この結果を踏まえてMadjid氏は,「スタチンは服用開始初年度には有意な生存率の改善をもたらさない」と述べた。スタチン服薬開始1年後までに生命予後改善作用が認められたのは,服用者のおよそ40%のみであった。
 初年度に有意な生存率改善作用が認められない理由としてMadjid氏は,スタチン服用開始から脂質低下に2週間,炎症減少まで10日間,内皮機能改善まで4〜6週間といったタイムラグが存在することを指摘した。
 そのうえで同氏は,スタチンの予後改善効果が発揮されるまでのタイムラグを埋める治療の必要性を強調し,より高用量のスタチン,あるいは抗酸化作用やHDLコレステロール増加作用を有する薬剤など,他剤の追加が有用である可能性を示唆した。
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1969
What are the Future Targets of Therapy beyond Intensive Statin Therapy? An Analysis from PROVE IT-TIMI22
British Heart Foundation International Fellow, U.S.A Kausik K. Ray氏

ACS後の積極的LDL-C低下治療が奏効しない患者像が明らかに:PROVE ITサブ解析

■高用量スタチンを併用してもイベントが認められる症例の予後予測因子を検証
 Ray氏らは,PROVE ITの被験者4,162例中,アトルバスタチン群に割り付けられた2,099例を,「死亡,心筋梗塞,入院を要する不安定狭心症」を来したイベント群と非イベント群に分け,試験開始時,開始1カ月後,4カ月後の臨床検査値を用いて,イベントの予測因子を探った。また,イベント発生時期を,試験開始4カ月以内の早期と4カ月以降の後期に分けた。
 まず早期イベント群(124例)は非イベント群(1,939例)に比べ,試験開始時,有意に高齢(61歳 vs 58歳, P=0.03)かつ高血圧合併例が多く(63% vs 51%,p=0.02),HDL-コレステロール(HDL-C)がわずかに高かった。LDL-Cならびにトリグリセライド(TG)は同等であった。
 しかし多変量解析の結果,早期イベントの独立した予測因子は,「1歳の加齢」(ハザード比:1.04,p=0.002),「喫煙」(同1.82,p=0.02),「試験開始時HDL-C 1mg/dL高値」(同0.97,p=0.046)の3つだった。
 一方,試験開始4カ月以降に生じた後期イベント群(140例)は非イベント群(1,777例)に比べ,試験開始時に,より高齢(62歳 vs 58歳,p<0.001)で糖尿病(31% vs 18%,p<0.001)と高血圧(61% vs 50%,p=0.008)合併例が多く,またACSに対する経皮的冠動脈インターベンション施行率が低かった(48% vs 58%,p=0.02)。
 脂質代謝の推移を比較すると,後期イベント群では非イベント群に比べ,試験開始1カ月後と4カ月後のLDL-Cが有意に高かった(TGは有意差なし)。糖代謝異常は試験開始時より有意差が認められ,後期イベント群ではHbA1c,血糖値とも非イベント群よりも有意に高かった。C反応性タンパク(CRP)濃度は,試験開始4カ月後に初めて,後期イベント群において非イベント群よりも有意に高値となった。
 多変量解析を行うと,試験開始4カ月後のHbA1c 1%上昇(ハザード比:1.28,p=0.0004),CRP 1logの上昇(同1.25,p=0.01),LDL-C 1mg/dLの上昇(同1.01,p=0.04),ならびに1歳の加齢(同1.03,p=0.002),男性(同2.27,p=0.003)が,後期イベントの有意なリスクとなっていた。 
 「ACS直後,高用量スタチンを用いた積極的脂質低下療法を行っても,低HDL-C例と喫煙者では早期の冠動脈イベントが,また4カ月後に脂質・糖代謝異常や炎症マーカー増加を認める例では,その後の冠動脈イベントが増加していた」とRay氏はまとめた。
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3388
Baseline ApoB Predicts Benefit of Intensive Statin Therapy in Patients with ACS: an Analysis from PROVE IT-TIMI 22
TIMI Study Group, U.K. Kausik K. Ray氏

ACS後のアポBが高値を示す例では積極的LDL-C低下療法の影響が大きい

■試験開始時のアポB濃度は治療効果の予測因子となるか
 PROVE ITの4,162例の登録患者のうち,試験開始時アポB濃度が明らかであったのは3,683例,開始4カ月後では2,998例であった。
 試験開始4カ月後,高用量アトルバスタチン群のアポB濃度は,通常用量プラバスタチン群よりも有意に低値を示した(68.8mg/dL vs 91.7mg/dL,p<0.0001)。
 続いて,試験開始時のアポB濃度により患者を四分位群に分け,一次評価項目(死亡,心筋梗塞,入院を要する不安定狭心症,脳卒中,または冠血行再建術施行)の発生率を両薬剤群で比較した。イベント発生率の差は,アポB濃度が高まるにつれて大きくなった。アポB濃度が最も高い群(122〜139mg/dL)では,アトルバスタチン群においてプラバスタチン群よりも著明かつ有意なイベント減少が認められた(20% vs 28.5%,p=0.002)。アポB濃度が2番目,3番目に高い群では有意でないものの,同様の傾向が認められた。ただし,アポB濃度最低(71〜83mg/dL)群における一次評価項目発生リスクが両群間に差を認めなかった(27.1% vs 27.0%)点は興味深い。なお,この解析は背景因子の補正を行っていない。
 一方,試験開始4カ月後のアポB濃度とその後のイベント発生リスクは,アポB濃度が低いほどイベントが減少する傾向は認められるが,試験開始時のアポB濃度ほど明確な相関は見られなかった。
 そこで,試験開始4カ月後のアポB濃度によるイベント予測の特異度と感度を,ROCカーブを用いて同時期に測定したLDL-C値,non HDL-C値とそれぞれ比較したが,ROCカーブはほとんど同一曲線上に重なり,4カ月後のアポB濃度は有用な情報を提供しなかった。これらの解析は背景因子補正後の結果である。
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720
Homocysteine, Apolipoprotein B/AI Ratio and the Metabolic Syndrome are Independent Predictors of Cardiovascular Disease: The European Concerted Action Project
Haughton Institute, Ireland Tora Leong氏

ホモシステイン,アポB/AI比とメタボリックシンドロームは動脈硬化性疾患の独立した危険因子:COMAC研究

■冠動脈,脳血管,末梢血管のそれぞれで危険因子は異なる
 COMACは,欧州9カ国19施設において,動脈硬化性疾患を有する750例と,年齢・性別をマッチさせた対照800例を解析し,危険因子によるリスクの増加を報告した研究である。
 今回は,Hcy増加,システイン,アポ蛋白,メタボリックシンドロームが動脈硬化性疾患発症に及ぼす影響を検討した。COMACの対象1,550例中,上記データを入手できた1,150例が解析対象となった。
 まず,年齢,血圧,性別,喫煙,コレステロール値で補正後に単変量解析を行うと,Hcy高値(12.1µmol/L以上),アポB蛋白増加(0.1mmol/L),アポAI蛋白低下(0.1mmol/L),アポB/AI比(0.1の増加)とメタボリックシンドローム(NCEP基準)は,いずれも有意な危険因子となっていた。
 そこでこれらの因子を用いて変量解析を行ったところ,Hcy高値(相対リスク:1.97,P<0.001),アポB/AI比増加(同1.06,p=0.01)とメタボリックシンドローム(同1.79,p=0.002)のみが有意な因子として残った。
 さらに動脈硬化性疾患の病態別に検討すると,Hcy高値は冠動脈疾患(相対リスク:1.6),脳血管障害(同2.6),末梢血管障害(同1.9)全てにおいて危険因子であったが,アポB/AI比の増加は冠動脈疾患(同1.1),メタボリックシンドロームは冠動脈疾患(同2.0)と末梢血管障害(同2.0)の有意な危険因子であることが示された。興味深いのはシステイン濃度で,50µmol/Lの増加により冠動脈疾患(同1.4)が有意に増加する一方,脳血管障害(同0.7)は有意に減少していた。
 「同検討により動脈硬化性疾患の新たな危険因子が明らかになったが,冠動脈,脳血管と末梢血管障害では,それぞれの危険因子が異なる点に留意する必要がある」とLeong氏は結論した。
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2790
Metabolic Syndrome, Low-density Lipoprotein Cholesterol, and Risk of Cardiovascular Disease: a Population Based Study
Glostrup University Hospital, Denmark J. Jeppesen氏

動脈硬化性疾患発症に対するメタボリックシンドロームのリスクは高LDL-C血症と同等

■高LDL-C血症を伴うメタボリックシンドローム患者でリスクは顕著に増加
 Jeppesen氏らは,41〜72歳の主な動脈硬化性疾患を認めない2,493例を追跡した観察研究より,NCEP基準でメタボリックシンドロームに相当した376例(15.1%)を抽出し,高LDL-C血症の患者と比較した。高LDL-C血症の定義は,LDL-C値分布の上から15.1%の値とされ,結果として5.02mmol/L(194mg/dL)を超す380例(15.5%)が高LDL-C血症として抽出された。追跡期間は平均9.5年間であった。
 メタボリックシンドロームおよび高LDL-C血症の有無によって対象者を層別し,動脈硬化性疾患(心血管死,冠動脈イベントと脳卒中)発生リスクをもとめた。メタボリックシンドローム・高LDL-C血症のいずれも認めない群[LDL-C:3.76mmol/L(146mg/dL),HDL-C:1.48mmol/L(57.3mg/dL)]と比較すると,最もリスクが増加していたのは,高LDL-C血症を伴うメタボリックシンドローム患者[LDL-C:5.54mmol/L(214mg/dL),HDL-C:1.08mmol/L(41.8mg/dL)]で,相対リスクは3.21(95%信頼区間:1.99〜5.17)と有意な増加を認めた。
 次にリスクが増加していたのは,高LDL-C血症を認めないメタボリックシンドローム患者[LDL-C:3.87mmol/L(150mg/dL),HDL-C:1.02mmol/L(39.5mg/dL)]で,相対リスクは1.80(95%信頼区間:1.26〜2.57)だった。メタボリックシンドロームを伴わない高LDL-C血症[LDL-C:5.5mmol/L(213mg/dL),HDL-C:1.4mmol/L(54mg/dL)]の動脈硬化性疾患発症相対リスクは1.49(95%信頼区間:1.04〜2.13)であった。いずれも年齢,性別,喫煙補正後の比較である。
 Jeppesen氏はこの結果より「動脈硬化性疾患発症に対するメタボリックシンドロームと高LDL-C血症のリスクは同等だ」と結論した。
 なお,メタボリックシンドローム患者において,メタボリックシンドロームのいずれの構成要素が心血管イベント予測因子となっているかについてLDL-C値補正後に検討したところ,高トリグリセリド,高血圧,耐糖能異常が有意なリスクであり,腹部肥満とHDL-Cは有意ではなかった。
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2794
Metabolic Syndrome is the Only Non-classical Risk Factor Independently Associated with Mild Renal Insufficiency
Clínica Univeristaria de Navarra, Spain E. Alegria氏

メタボリックシンドロームと軽度腎機能障害の間に相関

■メタボリックシンドロームの改善により腎機能低下を抑制できる可能性
 MESYAS(Metabolic Syndrome in Active Subjects)はスペインの健常労働者を対象としたコホート研究である。2005年1月時点で追跡されていた19,041例中,血清クレアチニン(Cr)値が入手可能であった11,041例において,糸球体濾過率(GFR)を推計し,動脈硬化性疾患発症の危険因子との関係を検討した。平均年齢は40.2歳,78.5%が男性だった。
 まず腎機能障害例の割合だが,中等度以上の腎機能障害例(GFR<60mL/分)は3.3%と少なかったが,軽度障害例(GFR 60〜90mL/分)は23.6%と高頻度だった。
 動脈硬化性疾患発症と腎機能障害の重症度の関係を見ると,腎機能の低下に伴い,高血圧,糖代謝異常とメタボリックシンドロームの頻度増加傾向を認めた。なお,メタボリックシンドロームはNCEP基準を用いた。
 次に,軽度腎機能障害例における動脈硬化性疾患発症の危険因子の合併頻度を検討すると,最多はメタボリックシンドロームで軽度腎機能障害例の53.6%が合併していた。次いで,高コレステロール血症(200mg/dL超)52%,高トリグリセリド血症(150mg/dL超)52%,肥満50.8%,高血圧49.3%,糖尿病44.1%という結果であった。
 多変量解析を行うと,軽度腎機能障害の有意な危険因子となったのは,リスクの大きい順に糖尿病,高血圧,メタボリックシンドローム,LDLコレステロール高値(>160mg/dL)の4つのみだった。
 Alegria氏は「メタボリックシンドロームの改善により腎機能障害を抑制できる可能性が示された」と結論したが,軽度腎機能障害がメタボリックシンドロームを反映するマーカーとなり,動脈硬化性疾患の増悪因子となっている可能性も考えられる。
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Industry Press Conference
Achieving a Better Treatment Standard: Cardiologists' Beliefs about Improving LDL-C Treatment and Two Sources of Cholesterol

Press Conference Highlight〜より良いコレステロール低下療法を目指して

■コレステロール治療目標が達成できない要因〜スタチン治療の限界
Academic Medical Center, Netherlands J. J. Kastelein氏
 2001年に報告された,欧州における大規模調査EUROASPIRE IIでは,脂質低下薬服用患者の49%は総コレステロール目標値5mmol/L(190mg/dL)未満を達成できていなかった。その後再び欧州で行われた観察試験REALITYにおいては,LDLコレステロール(LDL-C)の目標値達成率は28%という結果であった。LDL-Cの目標値が達成されていない原因を探ったところ,以下のような医師側の考えが明らかになった(括弧内はLDL-C目標値未達に対する相対リスクと95%信頼区間)。
 まず,「スタチン増量による危険性の増加を危惧」(1.7:1.13〜2.56),「LDL-Cは目標値より10〜20mg/dL高値でも十分に低い」(1.83:1.24〜2.69)といった意識が明らかになった。しかし,目標値未達成の最大の原因は「現在のスタチンではLDL-C低下作用が不十分」(4.76:3.03〜7.46)であった。確かに,スタチン初期用量によるLDL-C目標値達成率は平均17%,増量しても34%というデータがある。
 スタチンを増量してもLDL-C目標値がさほど高くない理由を,Kastelein氏は「スタチン6%の法則」,すなわち「2倍に増量しても得られる追加効果は6%の低下にすぎない」と説明した。初期用量10mgを8倍の80mgに増量しても,LDL-Cは18%しか低下しない計算になる。以上の知見から脂質低下療法には「スタチン以外の薬剤の併用が求められる」と同氏は結論した。

■スタチンとエゼチミブの併用により目標達成率は有意に増加
The Metabolic Syndrome Institute, France Michel Farnier氏
 スタチン単独でLDL-Cが目標値に達していない患者にエゼチミブを追加すると目標値達成率が有意に改善されるとの論文が,本年になって既に4報,発表されている。その1つEASEでは,スタチン服用にも関わらずNCEP ATP IIIの LDL-C目標値を達成できていなかった3,030例をエゼチミブ10mg/日併用群(2,020例)とプラセボ群(1,010例)に無作為割り付け二重盲検法で6週間,追跡した。服薬継続中のスタチンにエゼチミブを併用することによりLDL-Cはさらに25.8%低下した。エゼチミブ併用群の71.0%がLDL-C目標値を達成でき,プラセボ(スタチン単独投与)群との到達率の差は高リスク患者ほど顕著であった。。
 またVYVA研究において,冠動脈疾患ないし同等のリスクを有する患者におけるLDL-C目標値70mg/dLの達成率は,アトルバスタチン単独よりも同用量のシンバスタチン+エゼチミブ10mg併用のほうが有意に高かった。

■エゼチミブとスタチンの有用性を確信する医師が増加〜意識調査結果より
Harris Interactive, U. K. Dori Stern氏
 Stern氏は,欧州5カ国より各75名ずつの循環器専門医を抽出し,本年7月に行った聞き取り調査の結果を報告した。調査に応じた医師の背景は,循環器専門医歴平均15.7年,患者数57.9例/週であり,うち脂質管理が必要な患者は35%というものである。
 調査の結果,医師の88%は心血管イベント抑制のために脂質低下療法は重要とし,また65%はスタチン単独療法による治療効果は不十分と認識していることが明らかになった。さらに85%の医師が,LDL-C目標値達成のためには,コレステロール吸収阻害が必要と回答していた。
 スタチン+エゼチミブ併用療法の長所と思われる点としては,65〜68%が有効性,61%は迅速な作用発現,あるいは高用量スタチンによる副作用増加を回避できる点を挙げた。このような結果をもとに,83%の医師は,自分または家族がリスクを有する高コレステロール血症となった場合,スタチンとエゼチミブの併用療法を行うと回答した。
 昨年の同時期の調査結果に照らすと,スタチン+エゼチミブ併用療法によるDual inhibitionの有用性を確信する医師が増加しつつあるとStern氏は述べた。

■エゼチミブを用いた過去に類似のない大規模臨床試験が進行中
University of Oslo, Norway Terje Pedersen氏
 ENHANCEでは,ヘテロ接合体性家族性高コレステロール血症例において,頸動脈肥厚退縮作用がエゼチミブ+シンバスタチン併用とアトルバスタチンで比較される。脂質低下薬がIMTに及ぼす影響を検討する試験としては史上最大だという。大動脈狭窄症におけるエゼチミブ+シンバスタチン併用による心血管イベント抑制作用を,プラセボと比較するのがSEASである。またSHARPでは,慢性腎疾患あるいは透析導入例に対するエゼチミブ+シンバスタチン併用が脳・心血管イベントに与える影響がプラセボ対照で比較される。アジア・オセアニア地区を含む全世界12カ国が参加する。
 さらに,急性冠症候群(ACS)患者においてエゼチミブ+シンバスタチン併用とシンバスタチン単剤の比較が,IMPROVE ITで検討されている。
 これらの試験によりエゼチミブの有用性が明らかにされると期待できるが,IMPROVE IT以外の試験はいずれも過去に類似の研究がなく,エビデンスの空白を埋めるという意味においても意義深い。

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