American Diabetes Association 66th Scientific Sessions WILL Medical Congress Report


女性糖尿病例における脂質管理は不十分
東洋人におけるメタボリックシンドロームとIMTの相関(韓国)
日本人におけるメタボリックシンドロームの腹部周囲径基準値は現行の基準値より低値とすべきか
長期フィブラート製剤服用でHDL-C増加作用が減弱する機序:FIELD Helsinki サブスタディ
糖尿病例では1mmol/L(38.7mg/dL)のLDL-C低下によりイベントが約1/5に減少
一般臨床においてスタチンの筋障害発現率は約7%
2型糖尿病の脂質代謝異常においてコレステロール吸収阻害剤とスタチンの併用がストロングスタチン単独に優る
混合型高脂血症に対する「コレステロール吸収阻害剤+スタチン+フィブラート製剤」併用は安全かつ有効
コレステロール吸収阻害剤とスタチンとの併用療法はストロングスタチン単独に比べ良好な脂質改善作用を示す
糖尿病例の脂質管理にコレステロール吸収阻害剤は必須である
この情報には一部、本邦未承認の情報が含まれております。


1162-P
Gender Differences in Quality of Diabetes Care: Is Dyslipidemia under-Treated in Women?
Q. Ngo-Metzger氏, USA

女性糖尿病例における脂質管理は不十分

■より積極的なLDL-C低下療法が重要である
 解析対象とされたのは,Kaiser Permanente Georgiaにて2002年に治療を受けた糖尿病患者9,533例(男性:4,879例,女性:4,654例)である。
 まず「HbA1c<7.0未満達成率」の比較では,男性25.4%に対し女性27.0%で有意差はみられなかった。一方,「LDLコレステロール(LDL-C)<130mg/dL」の達成率は,女性68.0%に対し男性では72.8%と女性の1.26倍となり,有意に高値であった(95%信頼区間:1.12〜1.41)。「LDL-C<100mg/dL」達成率も同様に,女性31.4%に対し男性は38.0%と,1.33倍の達成率(95%信頼区間:1.20〜1.48)であり,いずれも女性患者のLDL-C目標達成率が有意に低値であることを示していた。
 しかし背景因子に男女で差がみられ,とりわけ冠動脈疾患合併率は,女性7.7%に対して男性では13.7%と有意に高値であった(p<0.001)。そこで冠動脈疾患合併例のみで比較したところ,やはり男性(669例)に比べ女性(363例)のLDL-C管理は不良であった。すなわち,「LDL-C<130mg/dL」達成率は男性86.6% vs 女性76.6%(オッズ比:2.03,95%信頼区間:1.36〜3.05),「LDL-C<100mg/dL」達成率も,56.7% vs 44.8%(オッズ比:1.64,95%信頼区間:1.20〜2.26)と男性に比べ女性のLDL-C管理は不十分であることが示された。なお,冠動脈疾患合併例のみで背景因子を比較すると,高血圧,慢性心不全ともに合併率は女性で有意に高値であった。
 Ngo-Metzger氏らは,特に冠動脈疾患合併例において女性のLDL-C管理がより不良である点に着目し,積極的なLDL-C低下療法が必要であると警鐘を鳴らしていた。
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2136-PO
The Influence of the Presence of Metabolic Syndrome on the Intima-Media Thickness of Carotid Artery and Cardiovascular Risk Factors in Korean Type 2 Diabetes
In-Kyung Jeong氏, Korea

東洋人におけるメタボリックシンドロームとIMTの相関(韓国)

■高TG血症はIMT平均値,最大値と有意に相関
 糖尿病患者におけるメタボリックシンドロームの合併がIMTおよび心血管系リスクファクターに及ぼす影響を検討するため,まず糖尿病群(182例)の背景因子を対照群(184例)と比較したところ,腹部周囲径,血圧,トリグリセリド(TG),LDLコレステロール(LDL-C),総コレステロール(TC)/HDLコレステロール(HDL-C)比,高感度C反応性蛋白(hsCRP)対数値が有意に高く,HDL-Cは有意に低値であった。また,IMT平均値および最大値ともに,糖尿病群では対照群に比べて有意に高値であった。
 次に2型糖尿病におけるメタボリックシンドローム合併率を検討した。米国脂質管理ガイドラインであるNCEP ATP III基準を採用すると,2型糖尿病例のメタボリックシンドローム合併率は64%であったが,ATP IIIが採用する腹部径(男性≧102cm,女性≧88cm)の基準を東洋人へ適応させることは適切であるとは考えられないため,「男性≧90cm」,「女性≧80cm」を基準値としたところ,メタボリックシンドロームの合併率は75%に達した。
 続いてメタボリックシンドローム合併2型糖尿病例と非合併糖尿病例の背景因子を比較したところ,メタボリックシンドローム合併糖尿病例では非合併糖尿病例に比べ,高血圧合併率,腹部周囲径,HOMA-IR,TG値,TC/HDL-C比,hsCRP値対数値,ホモシステイン値,IMT厚ならびに微小血管障害合併率が高く,HDL-Cは低値であった。
 IMTに影響を及ぼす因子として,まずメタボリックシンドロームの構成因子で見ると,高TG血症のみがIMT平均値,最大値と有意な正相関を示していた。次に単変量解析で糖尿病例のIMTとの相関因子を求めたところ,年齢,ホモシステイン値,hsCRP対数値,尿酸値が有意に正の相関を示した。多変量解析では,「年齢」と「ホモシステイン値」のみがIMT肥厚の独立したリスクであることが明らかになった。
 以上を踏まえ,「東洋人においても,メタボリックシンドロームは動脈硬化リスクを増加させる」と Jeong氏らは結論した。
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2307-PO
A Proposal for the Cutoff Point of Waist Circumference for the Diagnosis of Metabolic Syndrome in the Japanese Population
原 一雄氏,東京

日本人におけるメタボリックシンドロームの腹部周囲径基準値は現行の基準値より低値とすべきか

■メタボリックシンドロームに80%の感度が得られる周囲径は「男性83cm,女性73cm」
 原氏らは30〜80歳の男性408例,女性284例を対象に,メタボリックシンドローム構成因子の保有数と腹部周囲径の関係を検討した。メタボリックシンドローム構成因子は,「トリグリセリド(TG)≧150mg/dL」,「HDLコレステロール(HDL-C)<40mg/dL(男性),<50mg/dL(女性)」,「血圧>130/85mmHg」,「空腹時血糖値≧110mg/dL」とした。
 平均腹部周囲径は男性:83.5±7.8cm,女性:74.3±7.6cmで,メタボリックシンドローム構成因子を(2つ以上)保有していたのは男性28.7%,女性14.1%であった。
 これら構成因子の2つ以上の保有と,腹部周囲径の特異度・感度に関してROC曲線を用いて求めたところ,「メタボリックシンドローム構成因子2つ以上」に対し,感度と特異度が高くなった腹部周囲径は男性85cm,女性78cmであり,さらに,80%の感度が得られる周囲径を探ると,男性83cm,女性73cmとなった。
 原氏らはこれらの成績を踏まえ,日本人のメタボリックシンドローム診断における腹部周囲径基準値は,感度を考慮するなら男性83cm以上,女性73cm以上が適切であると思われるとした。
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860-P
Effects of Long-Term Fenofibrate Treatment on HDL Subspecies in Type 2 Diabetes: FIELD Helsinki Substudy
Anne Hiukka氏, Finland

長期フィブラート製剤服用でHDL-C増加作用が減弱する機序:FIELD Helsinki サブスタディ

■HDL3増加作用が糖尿病性脂質代謝異常により打ち消されている可能性を示唆
 
同サブスタディでは,50〜75歳の2型糖尿病例で総コレステロール5.5 mmol/L(213mg/dL)未満,かつトリグリセリド(TG)5.0mmol/L(443mg/dL)未満であった171例(フェノフィブラート群:87例,プラセボ群84例)が対象とされた。
 5年間の追跡後,フェノフィブラート群のLDLコレステロール(LDL-C)は2.72 mmol/L(105.3mg/dL)まで低下し,プラセボ群の3.05 mmol/L(118.0mg/dL)に比べて有意に低値となった(p<0.001)。TGも同様に,プラセボ群1.77 mmol/L(156.8mg/dL)に比べてフェノフィブラート群1.28 mmol/L(113.4mg/dL)と有意に低下した(p<0.001)。
 一方,HDL-Cは,両群間に有意差がみられなかった。そこでHDL分画別の検討を加えたところ,フェノフィブラート群ではプラセボ群に比べ,HDL2が32.6%有意に減少したのに対し(p<0.001),逆にHDL3は11.9%有意に増加した(p<0.001)。
 同様の変化が他の因子でもみられ,apo蛋白の変化では,apoA-1には両群で有意差はみられなかったが,apoA-IIはフェノフィブラート群でのみ有意に増加していた(27.8%,p<0.001)。またリポ蛋白の変化では,フェノフィブラート群でのみ,LpA-Iの有意な減少(-22.7%,p<0.001)とLpAI-AIIの有意な増加(11.9%,p<0.001)が認められた。
 以上の結果を踏まえHiukka氏らは,フェノフィブラートは本来HDL3を増加させるが,その効果は糖尿病性脂質代謝異常により打ち消されている可能性があると考察した。本サブ解析は,FIELD研究においてフェノフィブラートの冠動脈死増加傾向が示されたことを踏まえ,その機序を解明すべく実施されたが,本研究の結果のみからその機序は明らかにできず,さらなる解析が必要であると報告を結んだ。
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920-P
Benefits of Reducing LDL Cholesterol among 18,686 Patients with Diabetes: Meta-Analysis of 14 Randomized Trials of a Statin Versus Control
Patricia M. Kearney氏, UK

糖尿病例では1mmol/L(38.7mg/dL)のLDL-C低下によりイベントが約1/5に減少

■LDL-C低下は血管疾患合併・高血圧の有無にかかわらず有効である
 解析の対象となった90,056例中,試験開始時において17,220例に2型糖尿病,1,466例に1型糖尿病が認められた。71,370例は糖尿病非合併例であった。平均5年間の追跡期間中14,348例が脳・心血管イベントを来した。脳・心血管イベントの内訳は「非致死性心筋梗塞,冠動脈死,脳卒中,冠血行再建術施行」である。
 スタチン群での,LDLコレステロール(LDL-C)1mmol/L(38.7mg/dL)低下による脳・心血管イベントリスクを検討したところ,1型,2型糖尿病ともに,21%の有意なリスク低下が認められた(それぞれp=0.01,p<0.0001)。
 これらイベントを,冠動脈イベント(非致死性心筋梗塞と冠動脈死),脳卒中,冠血行再建術別にみたところ,1型糖尿病では例数が少ないことから減少傾向にとどまったが,2型糖尿病例ではいずれも有意な減少がみられ,相対リスクは冠動脈イベント:0.78(p<0.0001),脳卒中:0.77(p<0.0001),冠血行再建術施行:0.75(p=0.0001)であった。
 糖尿病例で認められたスタチンの脳・心血管イベント減少効果は,試験開始時の合併症の有無にも影響されず, LDL-C 1mmol/L(38.7mg/dL)低下の結果得られたイベント相対リスクは,血管疾患合併例で0.81(95%信頼区間:0.75〜0.89),血管疾患非合併例で0.73(95%信頼区間:0.65〜0.81)であった。また,血管疾患非合併例中,高血圧例のみで比較しても,スタチン群におけるLDL-C 1mmol/L(38.7mg/dL)低下による相対リスクは0.76(95%信頼区間:0.62〜0.93)と有意に低下していた。
 また,スタチン群における脳・心血管イベント減少効果は,性別,年齢(≦65歳,>65歳),高血圧治療の有無,BMI,治療開始時LDL-C値,喫煙の有無,糸球体濾過率のすべてのサブグループで認められた。
 以上の結果についてKearney氏らは「スタチンは2型のみならず1型糖尿病の主要脳・心血管イベントを減少させる」と総括し,糖尿病例では血管合併症や高血圧の有無にかかわらず,1mmol/L(38.7mg/dL)のLDL-C低下により脳・心血管イベントは約1/5になると結論した。
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536-P
Incidence of Statin-Induced Myopathy in Patients with Diabetes
Gregory A. Nichols氏, USA

一般臨床においてスタチンの筋障害発現率は約7%

■スタチン服用による筋障害の発現は臨床試験より一般臨床で高頻度である
 対象は,非営利ヘルスケア組織 Kaiser Permanente Northwest(KPNW)の記録より抽出された2型糖尿病患者のうち,1997年1月1日から2004年12月31日の間にスタチン服用を開始した10,247例である。これら患者の98%はロバスタチンまたはシンバスタチンを服用していたため,その他のスタチン服用例は対象から除外し,2005年12月31日までの筋障害発現率を調査した。対照群は,上記10,247例と同時期にKPNWに登録されたがスタチンを服用していなかった2型糖尿病患者10,247例である。
 検討の結果,スタチン服用群では非服用群に比べ,筋障害の発現頻度が有意に高値であった。筋障害発現率はスタチン服用群7.09%で,非服用群5.54%に比べて有意に高く(p<0.0001),筋痛発現率もスタチン非服用群4.70%に対し,服用群5.82%と有意に高頻度であった(p=0.0004)。
 ただし,スタチン服用群と非服用群では背景因子に差がみられたことから,それらの補正後の成績では,スタチン服用群における筋障害,筋痛発現率は増加傾向を示すにとどまった。一方,血清クレアチニン・キナーゼ(CK)値正常上限〜3倍上昇の頻度は,補正後も,スタチン非服用群1.3人/1,000人・年に比べ服用群4.1人/1,000人・年で有意に高かった(p<0.001)。
 また,筋障害の発現リスクを多変量解析で求めたところ,フィブラート製剤併用によるオッズ比2.11(95%信頼区間:1.66〜2.67)が最大であり,次いでステロイド併用(オッズ比:1.80,95%信頼区間:1.46〜2.23)であった。また「脳・心血管疾患合併症(1.23)」,「5歳の加齢(1.04)」も筋障害リスクを有意に増加させていた(カッコ内はオッズ比)。一方で筋障害の発現率は,メトホルミン服用により有意に低下していた(オッズ比:0.80,95%信頼区間:0.65〜0.99)。筋痛発現リスクが筋障害発現リスクと異なる点は,「加齢」がリスクではないこと,および「男性」がリスクを有意に低下させていた点である(オッズ比:0.78,95%信頼区間:0.69〜0.89)。血清CK増加の有意なリスクは「スタチンの使用」が最大であった(オッズ比:3.20,95%信頼区間:1.92〜5.34)。
 Nichols氏は以上の成績を踏まえ,「一般臨床では,スタチン服用による筋障害の発現頻度は臨床試験より高く,スタチンがリスクであることが示された」と総括した。
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17-LB
Ezetimibe/Simvastatin (E/S) vs Atorvastatin (A) in Hypercholesterolemic (HC) Patients with Type 2 Diabetes (T2DM)
Roland B. Goldberg氏, USA

2型糖尿病の脂質代謝異常においてコレステロール吸収阻害剤とスタチンの併用がストロングスタチン単独に優る

■「LDL-C<70mg」達成率でも有意な差
 
本検討の対象は,プラセボ導入期間中にLDL-C>100mg/dLかつトリグリセリド(TG)<400mg/dLであった18〜80歳の2型糖尿病患者(HbA1c≦8.5%)1,229例である。これら患者を「エゼチミブ10mg/日+シンバスタチン20mg/日」vs 「アトルバスタチン 10ないし20mg/日」,あるいは「エゼチミブ10mg/日+シンバスタチン40mg/日」 vs 「アトルバスタチン40mg/日」に無作為に割り付け,二重盲検法で6週間追跡した。
 その結果,「エゼチミブ10mg/日+シンバスタチン20mg/日」群(247例)では,アトルバスタチン単独10mg/日(245例),20mg/日(245例)のいずれの群と比較しても,ベースラインからの有意なLDL-C低下が認められた(いずれもp<0.001)。「エゼチミブ10mg/日+シンバスタチン40mg/日」群(247例)と「アトルバスタチン単独40mg/日」群(245例)との比較でも同様の結果であった(p<0.001)。
 「LDL-C<70mg/日」の達成率の比較では,「エゼチミブ10mg/日+シンバスタチン20mg/日」群で59.7%と,アトルバスタチン10mg/日(21.5%),20mg/日(35.0%)よりも有意に高値であった(いずれもp<0.001)。アトルバスタチン単独40mg/日群でも「LDL-C<70mg/日」達成率は55.2%であり,「エゼチミブ+シンバスタチン40mg/日」群の74.4%に比べて有意(p<0.001)に低値であった。
 また,HDLコレステロール(HDL-C)の増加,non-HDL-C低下作用のいずれにおいても,アトルバスタチン単独群に比べ,エゼチミブ+シンバスタチン併用群で有意に強力であった。
 安全性に関しては,エゼチミブ+シンバスタチン併用群ではシンバスタチンの用量を問わずALT,ASTともに正常上限値3倍以上の増加は1例もなかったが,アトルバスタチン単独群ではそれぞれ0.3%,0.4%の発現が認められた。
 以上の結果から,「糖尿病例の脂質代謝異常に対し,エゼチミブ+通常のスタチンはアトルバスタチン単独に優る」とGoldberg氏は結論した。
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2246-PO
Coadministration of Ezetimibe/Simvastatin (EZE/SIMVA) and Fenofibrate (FENO) is an Efficacious and Well-Tolerated Treatment for Patients with Mixed Hyperlipidemia
Eli Roth氏, USA

混合型高脂血症に対する「コレステロール吸収阻害剤+スタチン+フィブラート製剤」併用は安全かつ有効

■3剤併用療法はLDL-C,TG,HDL-C,apoBのすべてを有意に改善
 対象とされたのは,冠動脈疾患既往や冠動脈疾患相当リスクあるいは10年間冠動脈疾患リスク20%以上の患者を除く,LDL-C:130〜220mg/dL,トリグリセリド(TG):150〜500mg/dLの18〜79歳の混合型高脂血症患者である。また,2型糖尿病患者はLDL-C:100〜180mg/dLであれば対象に組み入れた。
 これらに相当する611例を,「エゼチミブ10mg/日+シンバスタチン20mg+フェノフィブラート160mg(3剤併用)」群,「エゼチミブ10mg/日+シンバスタチン20mg(エゼチミブ+スタチン併用)」群,「フェノフィブラート160mg単独(フェノフィブラート単独)」群および「プラセボ」群に,それぞれ3:3:3:1の割合で無作為に割り付け,二重盲検法により12週間追跡した。
 その結果,LDL-C低下率(中央値)はフェノフィブラート単独群,プラセボ群に比べ,3剤併用群では有意に低下したが,3剤併用群とエゼチミブ+スタチン併用群間に有意差はなかった(-45.8% vs -47.1%)。一方,3剤併用群におけるHDL-CおよびapoAの増加率はそれぞれ18.7%,11.1%で,エゼチミブ+スタチン併用群の9.3%と6.6%に比べて有意に高値であった。同様に,TG,non-HDL-C,apoB低下率(いずれも中央値)も,3剤併用群ではそれぞれ50.0%,50.5%,44.7%で,エゼチミブ+スタチン併用群の28.6%,45.2%,39.0%よりも有意に高値であった(いずれもp=0.003)。
 3剤併用群,エゼチミブ+スタチン併用群およびフェノフィブラート単剤群のいずれも,忍容性は良好であった。
 以上の成績を踏まえ,「混合型高脂血症に対しては,エゼチミブ+スタチン併用へのフェノフィブラート追加により,脂質プロファイルのより大きな改善が期待できる」とRoth氏らは結論した。
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2249-PO
Evaluation of Ezetimibe/Simvastatin Versus Rosvastatin in Hypercholesterolemic Patients with Type 2 Diabetes or Metabolic Syndrome
Christie M. Ballantyne氏, USA

コレステロール吸収阻害剤とスタチンとの併用療法はストロングスタチン単独に比べ良好な脂質改善作用を示す

■メタボリックシンドロームや2型糖尿病合併の有無を問わずエゼチミブの併用は有用
 本検討の対象は,2型糖尿病例(367例),および糖尿病を伴わないメタボリックシンドローム例(811例),および糖尿病・メタボリックシンドロームのいずれも認めない1,661例である。これら被験者をそれぞれ,「エゼチミブ10mg/日+シンバスタチン20mg/日 vs ロスバスタチン10mg/日」,「エゼチミブ10mg/日+シンバスタチン40mg/日 vs ロスバスタチン20mg/日」,「エゼチミブ10mg/日+シンバスタチン80mg/日 vs ロスバスタチン40mg/日」に無作為に割り付け,6週間にわたって二重盲検法で追跡した。
 糖尿病合併例の検討では,エゼチミブ+シンバスタチン(20〜80mg/日)群(186例)のLDL-C低下率は58.5%で,ロスバスタチン(10〜40mg/日)単独群(181例)の54.2%に比べて4.3%有意に高値であった。トリグリセリド(TG)低下率も,ロスバスタチン群の26.7%に対しエゼチミブ+シンバスタチン群は28.2%で有意に優れていた。
 糖尿病を伴わないメタボリックシンドローム例においても,LDL-C低下率はロスバスタチン単独群(416例)の51.8%に対しエゼチミブ+シンバスタチン群(395例)では55.0%と有意に高く,TG低下率もエゼチミブ併用群で有意に高値であった(31.6% vs 29.2%)。
 これらの知見は糖尿病・メタボリックシンドロームのいずれも有さない群においても同様の結果であり,LDL-C低下率は55.6% vs 51.0%,TG低下率は23.4% vs 21.5%と,いずれもエゼチミブ+シンバスタチン群(837例)でロスバスタチン単独群(824例)に比べ有意に高値であった(いずれもp<0.001)。
 なお,HDLコレステロール増加率は各治療群間で差は認められず,おおむね5〜10%であった。
 以上より,糖尿病やメタボリックシンドローム合併の有無を問わず脂質代謝改善には,ロスバスタチン単独よりもエゼチミブ+シンバスタチン併用がより望ましいと考えられた。
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Corporate Symposia
New Perspectives on the Real-World Management of Dyslipidemia: Cases and Controversies

糖尿病例の脂質管理にコレステロール吸収阻害剤は必須である

■積極的LDL-C低下療法の重要性と臨床上の問題点
Eliot A. Brinton氏, University of Utah, USA 
 1次予防,2次予防を問わず,冠動脈イベント発生率とLDL-C値は正の相関を示すことが明らかになっている。大規模試験が報告されるたびにこの相関を裏付けるエビデンスが蓄積され,LDL-Cに関しては“The lower, the better”であることに間違いない。米国の脂質管理ガイドラインNCEP ATP IIIは2004年,超高リスク患者におけるLDL-C目標値を70mg/dL未満に改訂した。同ガイドラインではトリグリセリド(TG)が200mg/dLを超える場合は,LDL-Cの低下に加え,non-HDLコレステロール(non-HDL-C)をLDL-C目標値+30mg/dL未満まで低下させるよう推奨しており,超高リスク例のnon-HDL-C目標値は「100mg/dL未満」となる。
 このように管理目標値が下方修正される中,Brinton氏が憂えるのは現実における脂質管理目標達成率の低さである。超高リスクの糖尿病患者では,LDL-C<70mg/dL達成率は16%足らずという報告もある。
 このようにLDL-C目標値の達成率が低い一因として,Brinton氏は「服薬コンプライアンスの低さ」を指摘している。実際に,スタチンの服薬コンプライアンスは,処方開始から2年後には半分以下に低下するというデータも報告されている。そこで推奨されるのがスタチンと他剤の併用である。併用療法ではスタチンの用量が少なくて済むため,有害事象発現率が低く,高いコンプライアンスが期待できる。また併用薬によってはLDL-Cだけでなく血清脂質の全般的な改善も期待できるだろう。
 現在,スタチン±フェノフィブラートを比較するACCORD試験,スタチン±ナイアシンによるAIM HIGHなどの試験とならび,スタチン単独とスタチン+エゼチミブ併用を比較するENHANCE,IMPROVE-IT,SEAS,SHARPの各試験が進行している。いずれも臨床的エンドポイントを持つ試験であり,結果が待たれている。

■動脈硬化惹起性の高いsmall dense(小粒子・高密度)LDLの低下にはapoBの減少が重要
Allan D. Sniderman氏, McGill University, Canada
 non-HDL-CはLDL-Cとともに動脈硬化のリスクであるが,中でもsmall dense LDLは高リスクである。small dense LDL低下にはapoB蛋白の減少を伴うが,スタチンは必ずしもapoBを低下させる訳ではなく,アトルバスタチンを用いたACCESS試験では,LDL-Cとnon-HDL-Cはほぼ25パーセンタイル値まで低下したが,apoBは50パーセンタイル値にも低下しなかった。よって,non-HDL-C濃度は必ずしもapoB濃度を反映しない点をSniderman氏は強調した。
 糖尿病例では特に,apoB濃度はLDL-C濃度よりもリスクとして大きいことが,アトルバスタチンの有用性を検討したCARDSの後解析(学会報告)より明らかになっている。したがって,特に糖尿病例ではLDL-Cを低下させるだけでは不十分で,apoBの強力な低下が必要ある。エゼチミブも選択肢の1つとされたが,しかし現状でどの薬物治療がベストかはまだ断言できないと,Sniderman氏は述べた。

■エゼチミブ+スタチン:LDL-C“The lower, the better”のエビデンス
Sergio Fazio氏, Vanderbilt University, USA
 スタチンによる積極的LDL-C低下療法のイベント抑制効果を検討したHPS,TNT,PROVE-IT,IDEALなどにおいて,高用量スタチンによる超積極的LDL-C低下療法の有効性は確立されているが,Fazio氏が懸念を表明するのは安全性である。比較的短期間の臨床試験の成績においても,高用量スタチンを用いた超積極的LDL-C低下群における有害事象の発現率は,通常用量を用いた群に比べ有意に高い。
 そこで期待されるのが,通常用量のスタチンとエゼチミブ10mg/日の併用である。エゼチミブの併用はスタチン増量以上に血清脂質の全般的な改善効果が得られる一方で,有害事象の発現は高用量スタチンの単独投与に比べ有意に少ないとのエビデンスが蓄積しつつあり,その1つにEASE試験がある。同試験において,アトルバスタチン,シンバスタチン,プラバスタチン等のスタチン服用時においてもLDL-Cが目標値に達しない患者を,プラセボまたはエゼチミブの追加投与に無作為割り付し比較したところ,患者が保有するリスクの高低にかかわらずエゼチミブ併用群ではスタチン単独群に比べ, LDL-C目標値達成率が高かった。
 また2型糖尿病やメタボリックシンドローム例においても,エゼチミブの併用によりスタチン単独よりも有意に高い血清脂質の全般的な改善効果が得られた。エゼチミブは,フィブラート製剤やナイアシンとも安全に併用できると考えられ,これらの患者における有用性が期待される。
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